2028年1月以降、PlayStation新作ディスクの生産は終了する

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、2028年1月以降にPlayStation向けに発売される
すべての新作ゲームについて、
ディスク版の生産を終了すると発表しました。

すでに発売されているゲームや、2028年1月より前にディスク版として発売されるゲームは対象外です。
今回の発表は、既存ディスクの利用終了を告知するものでもありません。

その後、ソニーがデジタル専用化の延期を再検討しているという記事も出ていますが、
情報源の確認されていない噂です。
2026年8月31日時点で、日程の変更を示す公式発表は確認できませんでした。
7月31日のソニーの決算説明会Q&Aでも、
2028年の終了予定を前提にしながら、利用者の好みや期待へどう応えるかを慎重に検討すると説明しています。
この回答も、延期や再検討を発表したものではありません。

私は、ディスクを永遠に残してほしいわけではありません。
ダウンロード版ならディスクを交換せずに遊べますし、保管場所も取りません。
ゲームデータそのものを、これからも物理媒体へ入れ続けなければならないとも思っていません。

それでも、現在の仕組みのままディスク版だけがなくなることには違和感があります。
なくなる前に、デジタル販売の側でやるべきことが、まだたくさん残っているように見えるからです。

デジタル版で失った「所有」の範囲

PlayStationのソフトウェア利用規約には、
ゲームソフトウェアは形式を問わず、利用者へライセンスされるものであり、
販売されるものではないと書かれています。
PlayStationオンラインサービス利用規約でも、
サービスやコンテンツは有償・無償を問わず譲渡できないとされています。

ディスク版なら、ディスクとパッケージは手元に残ります。
遊び終われば売却でき、人へ譲ることも、中古で買うことも、
棚へ並べてコレクションすることもできます。

一方、現在のダウンロード版で得るのは、基本的にアカウントへ登録される譲渡不可の利用ライセンスです。
自由に売ることも、人へ渡すこともできません。
私には、そこで失われる選択肢に見合う価格差が、
物理版とダウンロード版の間にあるようには感じられません。

利用ライセンスとして提供すること自体が悪いとは思いません。
けれど、ライセンスなら、売却・譲渡できる物理版とは違う価格や利用方法があってもいいはずです。

料金を払って、譲渡できないライセンスをアカウントへ追加するだけになるのなら、
それはPlayStationではなく、「LicenseStation」になってしまうのではないでしょうか。

PS3時代から変わったもの、変わっていないもの

PlayStationのダウンロード販売は、PS3の時代からありました。
それから約20年の間に、通信速度やストレージは大きく進歩しています。
クラウドセーブ、事前ダウンロード、リモートプレイ、サブスクリプションなど、
デジタルでゲームを遊ぶための周辺環境も増えました。

それなのに、「料金を払い、アカウントへ譲渡できない利用ライセンスを登録する」という
販売の基本は、あまり変わっていないように感じます。

ディスクをなくすだけでデジタル化を完成させず、
販売の仕組みそのものまで進化させてほしいと思います。

Microsoftが示した、過去のディスクを捨てない方法

そんな中でMicrosoftが発表したのが、
同社の利用規則で「Disc to Digital Licensed Games」と分類されるXboxの新機能です。

2026年8月26日のXbox Wireによると、
Xbox Insidersによるテストを8月31日から開始し、対応するXbox OneやXbox Series Xのディスクを
本体へ入れてゲームを起動すると、デジタルライセンスを取得できます。
Xbox Wireでは、対象となるInsiderの範囲や地域までは示されていません。

開始時点では数千タイトルを予定し、大部分のXbox One・Xbox Series X用ディスクへ対応するとしていますが、
すべてのゲームが対象ではありません。
技術、ライセンス、パブリッシングなどの事情により、対象から外れる可能性もあります。
Xbox Play Anywhereに対応する作品では同機能を利用でき、Xbox Cloud Gamingも、
対応作品、端末、Game Passプランなどの条件を満たせば使えます。

これは、ディスクと無関係なデジタル版を一本もらえる仕組みではありません。
Microsoftの利用規則では、得られるものを「限定アクセスのデジタルライセンス」とし、
対象ディスクを持ち続けることを条件にしています。
ディスクを手放せば、デジタルライセンスは停止または失効する可能性があり、
ライセンスだけをディスクから切り離して譲渡することもできません。

売却後に新しい持ち主が再登録する詳しい手順や、元のライセンスが停止・失効する条件や時期などは、
現時点の公式情報だけでは分かりません。
一般提供の開始時期も未発表です。

それでも私は、この発表を見たとき、素直に「その手があったか」と思いました。
新しい仕組みを作るからといって、すでに存在する膨大なディスクを切り捨てず、
デジタルの利便性へつなごうとしているからです。

私が考えていたのは、すでにあるディスクをどう活かすかではなく、
これからの物理所有をどう作り直すか、ということでした。
そこには、すでに手元にあるディスクをどうするかという視点が抜けていました。
Microsoftは、その「過去」を拾っています。

過去のゲームディスクをデジタルライブラリへつなぐ様子

過去はディスク、これからはRFIDでもいい

過去の資産を未来へつなぐ方法として、Microsoftの考え方は面白いと思います。
一方で、これから発売されるゲームまで、ずっとディスクである必要はありません。

ゲームデータと、そのゲームを所有していることの証明は、分けられるはずです。
そこで私が考えたのが、RFIDカードのような小さな物理媒体でした。

ここで考えているRFIDは、小さくしたゲームメディアではありません。
カードの中へゲームデータを保存するのではなく、
「このゲームを所有している」と示す物理的な鍵として使います。
ゲーム本体はSSDへダウンロードします。

10GBのゲームでも、100GBでも、500GBでも、
所有を証明する媒体に必要な情報量はほとんど変わりません。
今後ゲームがさらに大容量化しても、所有証明の媒体は容量競争から切り離せます。

Microsoftの方法よりRFIDの方が優れている、という話ではありません。
Microsoftは過去の物理資産を未来へつなぐ仕組みで、
RFIDはこれからの物理所有を作り直すための案です。

過去はディスク、これからはRFIDでもいい。
二つの役割は違うので、どちらか一方を選ぶ必要はありません。

さらに考えを広げるなら、過去のディスクを使う人だけが、
対応する外付け光学ドライブを選べる仕組みも考えられます。
旧ディスクを外付けドライブで認証し、ゲームデータはネットから取得する。
過去資産のために、未来のゲーム機すべてが光学ドライブを標準搭載し続ける必要はありません。

名刺ファイルへゲームを集め、中古でも売れる

RFIDカードを名刺くらいの大きさにして、
表面へゲームのジャケットイラストなどを印刷すれば、
物として持つ楽しさも残せると思います。

名刺ファイルのようなケースなら、何十本、何百本と収納できます。
ディスクよりずっと省スペースで、ゲームの容量にも左右されません。

ゲーム所有カードを名刺ファイルへ収納し、ゲームデータを別にダウンロードする様子

さらに妄想を広げるなら、カードを入れたファイルごと読み取り場所へ置き、
所有しているゲームをまとめて認識できたら面白そうです。
もちろん、複数カードの同時認識、電波干渉、セキュリティ、不正複製、紛失時の扱いなど、
簡単には解決できない問題があります。

このRFIDが所有を示す物理的な鍵なら、中古売買にも使えます。

  1. RFIDカードを中古店へ売る
  2. 元の持ち主の利用権を失効させる
  3. 新しい持ち主がカードを買う
  4. 新しいアカウントへ権利を移す
  5. その場でゲームをダウンロードする

これは現在実現している仕組みではなく、
「こうなったらいいな」と考えている程度の私の妄想です。
実現できれば、物理的に所有し、売り買いできることと、
デジタル配信の便利さを同時に残せます。

物理媒体がいらない人には、譲渡できるデジタル所有権を

RFIDすら必要ない人には、物理媒体を持たない選択肢があっていいはずです。
ここでは便宜的に、それを「デジタル所有権」と呼びます。

遊び終わったゲームをオンラインの中古市場へ出品し、売買が成立した瞬間に、
元の持ち主の利用権を失効させ、新しい持ち主へ権利を移す。
購入した人は、その数秒後にはダウンロードを始められます。

通販で物理中古を買う場合は、商品が届くまで待たなければなりません。
所有を移した直後から遊ぶ準備に入れることこそ、デジタルの利点ではないでしょうか。

取引をプラットフォーム上で管理するなら、売買代金の一部をメーカーへ還元する仕組みも考えられます。
元の持ち主、メーカー、プラットフォーム、必要なら中古販売店へ分配する。
これまでの物理中古では難しかった、取引のたびにメーカーにも利益が入る市場を作れるかもしれません。

中古ショップを排除する必要もありません。
ゲームショップや通販サイトが公式デジタル中古販売店になり、
所有権の買取や再販を担う未来も考えられます。
物流がなくなっても、ゲームを次の持ち主へつなぐ役割は残せます。

同じゲームを、違う権利と価格で売る

ゲームを所有したい人ばかりではありません。
すでにサブスクリプションという選択肢もありますが、それだけでなく、
同じゲームでも必要な権利に合わせて買い方を選べてもいいと思います。

  • 譲渡できるデジタル所有権
  • 譲渡できない代わりに安価な利用ライセンス
  • 中古のデジタル所有権
  • プレイ時間に応じた従量課金

時間課金なら、一定時間操作がなければ警告を出し、
その後は自動的にサスペンドして課金を止める仕組みも必要でしょう。
長く遊ぶなら所有し、一度遊べれば十分なら時間課金を選ぶ。

限定版も、ゲームを遊ぶ権利とコレクターズアイテムを分けられます。
ゲームの権利は発売日にアカウントへ付与し、すぐダウンロードできるようにする。
フィギュア、アートブック、サウンドトラック、設定資料集、特製パッケージなど、
本当に物として欲しいものだけを配送すれば、荷物の到着を待たずにゲームを始められます。

ライセンス、所有権、物理特典をすべて同じ商品へ詰め込まず、
必要なものに合った価格で選べることも、デジタルだからできる進化だと思います。

一枚のディスクが担っていた役割を分解する

こうして考えてみると、一枚のゲームディスクには、
いくつもの役割がまとめられていました。

  • ゲームデータを保存する媒体
  • ゲームを所有していることの証明
  • ゲームを起動する鍵
  • 中古売買できる商品
  • 人へ譲渡できる物
  • コレクションする物

これらは、デジタル時代にも一つである必要があるのでしょうか。

ゲームデータはネットから取得する。
所有権はデジタルで管理する。
物として持ちたい人にはRFIDのような小型媒体を用意する。
過去の資産にはディスクと外付けドライブを残す。
所有が不要なら、安価なライセンスや時間課金など、所有以外の選択肢を用意する。

デジタル化とは、全員の選択肢を一つへ統一することではありません。
一枚のディスクに束ねられていた役割を分け、
必要なものだけを選べるように作り直すこともできるはずです。

一枚のゲームディスクから所有証明やダウンロードなどの役割が分かれていくイメージ

物理版がなくても困らない未来を先に作ってほしい

ここまで考えたRFID、デジタル中古、従量課金、外付けドライブなどは、
すべて私の妄想であり、願望です。

実現しようとすれば、法律、メーカーとの契約、価格設定、セキュリティ、
不正利用への対策、中古市場との関係など、難しい問題がいくつもあります。
私が考えた仕組みを、そのまま実装してほしいと言いたいわけではありません。

伝えたいことは、もっと単純です。

物理版をなくすなら、ただ選択肢を一つ減らして終わりにするのではなく、
「物理版はなくなったけれど、以前よりできることが増えた」と思える環境を先に作ってほしい。

売ることも、譲ることも、安く買うこともできる。
物として持ちたい人には、その選択肢も残る。
所有したくない人は、自分に合った料金で遊べる。

私は物理版を守ってほしいのではありません。
物理版がなくても困らない未来を、先に作ってほしいのです。

PlayStationではなく、「LicenseStation」になってしまう前に。