AIという言葉は、私が子供の頃から存在していました。
映画やゲームの世界では、人間と自然に会話をするAIが登場し、それはいつか実現する遠い未来の話だと、当たり前のように考えていました。

しかし、2010年代後半から、徐々にAIが身近な存在になり始めました。
そして2022年末にChatGPTが登場し、衝撃を受けました。
「こんな自然な文章をAIが作れる時代が来たのか」
当時、そう感じたことを今でも覚えています。

ただ、当時の私は、まだAIをそこまで信用していませんでした。
回答には間違いも多く、知りたいことを聞いても、何か物足りなさを感じることもありました。
便利な技術ではあるけれど、まだ人間の仕事を大きく変える存在になるとは、正直思えるほどではありませんでした。

そんな私が次に大きな衝撃を受けたのは、画像生成AIの進化でした。
自分が頭の中で想像していたものが、文章を入力するだけで、次々と美しい絵として現れる。
少し前にAIが描いた絵をネットで見た時には、自分が描いた方がマシではないかと思うくらい酷かった印象がありましたが、短期間でここまで進化したのかと驚いたものです。
絵を描くことができない私にとっては、まるで未来の道具を手に入れたような感覚でした。

気が付けば、時間を忘れてプロンプトを入力し、様々な画像を生成して遊んでいました。
それまで、絵を描くという行為は、才能や長い努力が必要な世界だと思っていました。
しかしAIは、その常識を簡単に飛び越えてしまいました。

そして、AIの進化は衰えるどころかさらに加速していきました。

GPT-4oの頃になると、私は仕事の中でもAIを頼るようになっていきました。
以前であれば、検索エンジンで何度も調べ、複数の記事を読み比べていたような内容も、まずAIに質問するようになりました。

プログラムの相談、設計の考え方、技術的な疑問。
AIは、ただ答えを返す検索ツールではなく、一緒に考えてくれる相手へと変わっていきました。

さらに2025年頃になると、AIは仕事だけではなく、私の日常にも深く入り込んでいました。
仮想通貨の将来について相談する。
体調について相談する。
新しいアイデアについて壁打ちをする。

気が付けば、スマートフォンに表示されるニュースや記事の多くが、AIに関するものになっていました。
毎日のように流れてくる新しいモデルの登場、性能の向上、AIを使いこなして成果を出している人たちの話。
それを見るたびに、私は期待すると同時に、不安も大きくなっていきました。

AIの進化は想像以上に速い。
そして、その波に乗ろうとしている人たちの行動もまた、とても速い。
プログラムを作るという行為のハードルは、これまでにない勢いで下がっていました。
長年技術者として積み重ねてきた知識や経験は、これから先も本当に価値を持ち続けるのだろうか。
画像生成AIが身近になった当時、絵師の方々が感じていたであろう不安や戸惑いを、私は少し理解できた気がします。

個人事業主という立場で、10年後、20年後も必要とされる存在でいられるのだろうか。
そんな危機感が、私の中で少しずつ大きくなっていきました。
もちろん、AIを怖い存在として遠ざけることもできたと思います。

しかし、私は以前から薄々感じていました。
AIの進化は、一時的な流行では終わらないだろうと。
この波はもはや止まらないと感じていました。
であるならば、遠ざけるのは得策ではないと考えました。

それに、技術者として長年仕事をしてきたからこそ、大きな技術革新の時代には、外から眺めている人よりも、自分の手で触れて理解しようとする方が、次の時代を生き抜いていけることを知っていました。
私は、AIに勝とうとは思いませんでした。
将棋や碁と同じように、デジタルで代替できることはAIに勝てなくなるだろうと考えていたからです。
勝つのではなく、AIと共存し、その力を活かせる人間になるべきだと考えました。

もちろん、その時の私は、AIの未来を楽観的に見ていたわけではありません。
むしろ、AIが尋常ではない速度で進化し、これまで人間の領域だと思われていた場所に次々と入り込んでくることに、強い危機感を持っていました。

だからこそ、考えたのです。
この変化についていくためには、AIを避けるのではなく、最も効率よくAIを理解する方法として、AI自身を使うべきではないかと。

では、どうすればAIをよりよく理解できるのでしょうか。
実際にAIと一緒に何かを作り、成功や失敗を繰り返しながら学ぶしかない。
そう考えるようになりました。

そして私は、一つの挑戦を始めます。
AIを使って、AIを学ぶ。
その挑戦が、次回から語る「競馬AI」開発の始まりでした。

これは単なる競馬の記録ではありません。

2020年代という、AIが人類の大きな転換点になろうとしている時代に、一人の技術者が何を感じ、何に不安を覚え、どのように行動したのか。

その軌跡を、ここに残していきたいと思います。